まずは、新しい日銀総裁に指名された植田氏について、見ていきたいと思います。
彼は、東大の数学科を出た後、学士入学して経済学を勉強し、MIT(マサチューセッツ工科大学)に留学して博士号を取った、いわゆるエコノミストとしては理想的なキャリア。
さらに、東大の名誉教授でもあります。
また、MITにいた時の指導教員が、スタンレー・フィッシャーという有名な教授です。
フィッシャー氏は、RBの副議長を務めたことがあります。また、二重国籍でイスラエルの国籍があったので、イスラエル中央銀行の総裁も務めたことがあります。
そのため、フィッシャーは理論にも実践にも強いということで、彼の門下からはバーナンキFRB議長やドラギECB中央銀行総裁、ローレンス・サマーズというアメリカの財務長官も務め、ハーバードの学長も務めたことのある人などが輩出されています。
そこで勉強していた植田氏は、国際的に顔の利くエコノミスト。
彼は政策委員として日銀の中枢にもいましたが、基本的に外向きの顔のいい方と言えます。
もちろん、英語もできるでしょうから向こうに出ていっても話は通じますが…
私は、それは本質的な問題ではないと思います。
■なぜ、植田氏が選ばれたのか?
メディアでは、雨宮正佳氏という今の副総裁が本命だろうと言われていましたが、なぜ、予測が外れて植田氏が選ばれたのでしょうか…?
私は、アメリカサイドからの力な圧力があったのではないかと思っています。
これは、アメリカのFRBではなくバイデン政権の方です。
バイデン政権から岸田首相に対して、「自分達の仲間で話が通じる人材を出すように」という圧力がかかってきて、植田氏の指名になったのではないかと思うのです。
実は今、マスコミが誤魔化されていただけで、陰の本命は植田氏だったのではという観測も出されています。また、サマーズ氏辺りが、それがバイデン政権の望むところだと言ってきた可能性もあるかもしれません。
そして、ご存じのように岸田首相は基本的に財務省の人で、財務省の操り人形とも言えるほどです。
彼が、財務省以外の意見を聞くとすれば、まず第一に、アメリカのバイデン政権でしょう。
ですから、そういった意味で財務省が望んだ人事ではないと思いますが、アメリカサイドから押し込まれてきた人事なのではないか、と思っております。
■日銀総裁が政策を180度変える?
そうすると、植田氏がどんなに優れた経済学者でどんなに人格的にご立派な方であるかはさておいて、植田氏ができる選択の幅は最初から決まっているということです。
もう一つ当たり前のことですが、日銀総裁を最終的に承認するのは国会。
しかし、これは形式的な話で、事実上は岸田首相なのです。
つまり、岸田首相の言うことを聞いて政策を決める人しか、もともと日銀総裁にはなれないということ。そのことを考えると、誰が日銀総裁になるかはそれほど重要なことではないでしょう。
誰が総裁になるかによって日銀の政策が180度変わるようなニュアンスで、面白おかしく報道しているマスコミもありますが、これは間違っていると思います。